フードペアリグでワインの魅力を最大限に引き出す

ワインを飲みながら食べる料理は、ワインの味わいに影響を及ぼします。ワインもまた、料理の味を左右します。料理とワインを組み合わせるのは、こうした効果をうまく利用して、理想的には、それぞれ単独で味わう時に比べて料理もワインも共に好ましい味わいとなるようにすることが目的です。

料理とワインの味わいに関する基本的な相互作用の理解するためには、人は様々な風味や香りの成分に対して異なる反応を示すものだということを覚えておくことが重要です。例えば、同じ程度の苦みであっても、他の人よりずっと強く苦みを感じる人もいます。これは個人的な好みとは別のことで、強く感じることを好む人もいれば、それを不快に思う人もいます。感覚と好みは供に人それぞれだということは、ある人にとって「完璧な組み合わせ」のように思えるものが、別の人にとっては平凡なものだったり、悪い組み合わせとまで思える場合があるということです。従って、料理とワインの組み合わせには、料理とワインの基本的な相互作用のほか、個人的な好みや感覚も考慮する必要があります。

料理とワインの味わいの主な相互作用

料理には、ワインの味を「かたく」(渋味や苦味と酸味か増し、甘みと果実風味が減る)する傾向にある二つの成分があり、甘みとうま味がこれに当たります。このほかにもワインの味を「なめらか」(渋みや苦味と酸味が減り、甘みと果実味が増す)にする傾向にある二つの成分があり、塩味と酸味がこれに相当します。一般に、ワインが料理の味に与える影響よりも、料理がワインの味わいに及ぼす影響の方が大きく、それは特に不快なものになりやすいです。

料理の甘味:

  • ワインの苦味、渋味、酸味、アルコールの温まるような感じを強める
  • ワインのボディ、甘み、果実風味を弱める

料理の甘みによって、辛口ワインは果実風味が薄れ、不快なほど酸っぱく感じられることがあります。料理に糖分が含まれている場合は、一般原則として、料理よりも甘いワインを選ぶのが適切な組み合わせとなります。

料理のうま味:

  • ワインの苦味、渋味、酸味、アルコールの温まるような感じを強める
  • ワインのボディ、甘み、果実風味を弱める

うま味は味覚で、他の主な味覚とは性質が異なるものですが、区別するのは難しいと言えます。甘みは糖、塩味は塩化ナトリウム、酸味はいくつかの酸(酒石酸)として、特定して味わうことができますが、うま味は他の味覚と一緒になりがちです。例えばグルタミン酸ナトリウム(MSG)に含まれる塩味や調理したキノコや乾燥したキノコが持つ他の風味と一緒に現れます。うま味を味わう最も簡単な方法の一つは、生のマッシュルームと、30秒間電子レンジで調理したマッシュルームの味を比べてみることです。マッシュルームのうま味は調理によって大きく増します。

ワインと組み合わせるのが難しいとされる多くの食品はうま味成分の含有率は高いが、ワインの味をかたくする影響を和らげるのに必要な塩味が不足しています。アスパラガス、卵、マッシュルーム、熟成したソフトチーズなどがその例です。けれど、塩漬けや燻製にした魚介や肉類、パルメザンチーズなどのハードチーズは、うま味と塩味が供に強く、そのため、ワインに及ぶ悪影響はさほど大きくない傾向にあります。

ワインの苦味はブドウ果実またはオークから抽出されたタンニンがもたらすものだということを覚えておきましょう。タンニンの多いバランスの取れたワインの場合、うま味の影響で苦味に起こる変化は過度なものとは思えないかもしれないし、ワインのバランスを崩すほどのものでもないでしょう。けれど、タンニンの少ない赤ワインや、オークまたはブドウの果皮との接触により造られた白ワインでは、うま味成分を多く含む料理と一緒に飲んだ時に驚くほど苦くなりバランスを欠いたものとなることがあります。

料理の酸味:

  • ワインのボディ、甘味、果実風味を強める
  • ワインの酸味を弱める

料理に酸味が含まれていると、非常に酸味の高いワインがバランスのとれたものになり、果実風味が強まるため、一般に料理をワインの組み合わせでは好ましい要素となります。けれど、ワインの酸味が低いと料理に含まれている強い酸味によって、ワインは風味がなく、力に欠け、ぼんやりしたものに感じられることがあります。

料理の塩味:

  • ワインのボディを強める
  • ワインの渋味、苦味、酸味を弱める

塩味もまたワインとの相性の良い食品成分で、ワインの果実風味の特徴が強くなり、渋味が和らげられます。

料理の苦味:

  • ワインの苦味を強める

苦味の感じ方は人によって大きく異なり、苦みを持つある化学成分に特に敏感な人が別の化合物には比較的鈍感なこともありえます。一般に、苦い風味は相乗効果をもたらします。つまり、料理だけの苦味は好ましいレベルで、ワインの苦味もバランスが取れたものであったとしても、料理とワインが一緒になると苦味の要素が結びつき、不快なレベルにまで達することがあります。この効果は非常に主観的なものです。

料理のトウガラシの辛味:

  • ワインの苦味、渋味、酸味、アルコールの焼けるような感じを強める
  • ワインのボディ、こく、甘味、果実風味を弱める

トウガラシの辛味は温まるような、あるいは焼けるような感じのことで、トウガラシの辛味に敏感かどうかは個人差があります。また、それをどの程度好ましく感じるか、あるいは不快に感じるかは人それぞれで、差も激しいです。トウガラシの辛味がもたらす影響は、アルコール度が低いワインよりも、高いアルコール度を持つワインの方が大きくなります。また、アルコールはトウガラシの焼けるような感覚を強め、これを好む人もいます。

その他の考慮点

風味の強さ-料理とワインは、一方が他方を圧倒することのないように、風味の強さを調和させるのが一般的に望ましいです。けれど、風味の強い料理(カレーなど)は、風味の弱いワイン(シンプルで香りがなく、オークを使っていない白ワインなど)とうまく組み合わせられる場合があります。

酸味と脂肪-酸味の高いワインと脂肪や油の多い料理は、ほとんどの人が非常に好ましいと感じる組み合わせです。この組み合わせは、酸味の効いたワインが料理のこってりした味を引き締めて、すっきりとした味わいにしてくれます。この組み合わせがもたらす効果は主観的なものです。

甘味と塩味-甘味と塩味が良い組み合わせになるのもやはり主観的なものですが、これは多くの人が好む組み合わせで、料理とワインの非常に好ましいペアになります。甘口ワインとブルーチーズは代表的な例です。

リスクの高い料理

甘味-甘味の強い料理には、少なくとも料理と同等の甘味を含むワインを組み合わせる。

うま味-料理に含まれるうま味はタンニンの渋味と苦味を強調してしまう。そこで選ぶワインにはこうして起こるワインの味わいの変化に対応できるように、凝縮された果実風味といった必要な成分を含んでいることが求められる。

うま味-料理がうま味成分を多く含んでいる場合、酸味や塩味を加えるとバランスが取れることがある。ただし、料理の基本的な特徴を変えないようにする。

苦味-苦味の強い料理はワインの苦味を強調する。白ワインがタンニンの少ない赤ワインを考えてみる。

トウガラシの辛味-トウガラシの辛味が効いた料理には、白ワインかタンニンの少ない赤ワインで、いずれもアルコール度が高くないものを組み合わせます。トウガラシの辛味でワインの果実風味と甘味も弱まることがあるため、この影響が少なくなるように、これらの成分が強めのワインを考えてみる。

リスクの低い料理

塩味や酸味の強い料理は概してワインと組み合わせやすいです。ただし、酸味の強い料理は一般的に酸味の高いワインと組み合わせないと、軽すぎて力のないワインになってしまうことに注意しましょう。

リスクの高いワイン

ワイン(と料理)に含まれる構成成分が多ければ多いほど、起こりえる味覚の相互作用は増えてきます。このため、組み合わせはより複雑になるが、より一層興味深い結果が生まれることもあります。最も問題になるのは、オークとブドウから来るタンニンの苦味と渋味が強くて、酸味とアルコール度が高く、複雑な風味を持つワインです。

リスクの低いワイン

残留糖分が少ないシンプルなオーク未使用のワインはどんな料理と組み合わせても不快な味になることはなさそうです。だた、こうした類のワインは料理と組み合わせても違った味が引き出されることはめったにないため、料理とワインの組み合わせは面白みのない経験に終わってしまうことがあります。

上述した原則を応用する上で最も生産性の高い方法の一つは、既に知られている良い組み合わせというものを吟味して、それが良いとされる理由を考えてみることです。そうした理由を理解できたら、やはり良い組み合わせとなりえる別のワインを見つけることができるでしょう。例えば、ミュスカデとシャンパーニュはどちらも牡蠣との相性が良いが、その理由は熟成にオークが使われていないこと(そのため、牡蠣のうま味成分で台無しになる苦味成分を持たない)、風味が比較的弱いこと(従って、牡蠣が持つ繊細な風味を圧倒することがない)、酸味が高いこと(その結果、例えばレモンジュースをかけて牡蠣を食べても、その力強さと爽やかさが失われない)です。これらの基本的な判断基準を満たす別のワインも良い組み合わせとなるはすです。リアス・バイシャスのアルバリーニョ、ハンター・ヴァレーのセミヨンなどを例に挙げられるかもしれなでしょう。

「赤みの肉には赤ワイン魚には白ワイン」

赤みの肉に組み合わせられるのは赤ワインだけという考えは、赤ワインのタンニンが肉のタンパク質と結合し、ワインに含まれるタンニンの影響が和らぐという判断に基づくものです。だが、タンニンがタンパク質と結合するのは本当だが(赤ワインを吐き出すときに唾液をみると分かる)、タンニンを和らげるのにより重要な役割を果たすのは、肉料理に使われている塩であると考えられています。

魚の中にはうま味成分を多く含むものがあり、それが赤ワインの苦味と渋味を強く感じさせることがあります。魚料理に良い組み合わせとして白ワインが推奨されるのはこのためです。しかし、この反応は塩と酸でバランスを取り戻すことができ、どちらもほとんどの魚料理で普通に使われています。より避けにくいのは赤ワインに含まれる化合物と脂肪成分の多い魚との反応で、これは金属的な味を生み出しやすいです。こうしたタイプの魚では、原則に従って、白ワインとだけ組み合わせるのがより安全でしょう。ここでもまた、料理(特にソース)に含まれるあらゆる成分のほか、一緒に供されるものについても考慮することが重要になります。

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